公益通報者保護 解雇・懲戒に刑事罰を 事業者と決定者へ 消費者庁・検討委報告書(2025/2/3)
消費者庁設置の公益通報者保護制度検討会(座長=山本隆司東京大学大学院教授)は公益通報を理由とした労働者の解雇・懲戒に対して、刑事罰を導入すべきとする報告書を公表した。罰則は事業者のほか、意思決定に関与した者を対象とし、法人に対してはより重い量刑を科す。配置転換については、採用時に勤務地や職務内容を定めず、定期的な異動を行う日本の雇用慣行を考慮し、罰則の対象から外すとした。報告書を受け、消費者庁は今通常国会に公益通報者保護法の改正法案を提出したい考えだ。
公益通報者保護法は公益通報を理由とした解雇、配転、降格、減給、嫌がらせなどの不利益取扱いを禁止している。現行法は民事上の禁止規定に留まり、不利益取扱いを受けた労働者が裁判を通じて事後的な救済を図る負担は大きく、抑止力として不十分との指摘が従来からされてきた。
消費者庁が昨年2月に公表した「就労者1万人アンケート調査」結果によると、勤務先で重大な法令違反を目撃したとしても、41.1%の労働者は通報しないと回答している。相談・通報した後の心情については、17.2%が「後悔している」と答えた。後悔した理由は42.1%が「不利益な取扱いを受けた」としている。近年の裁判例でも報復人事と認定した事案もあり、不利益取扱いが通報・相談を躊躇する1つの要因になっている実態がある。
検討委員会の報告書は、公益通報を理由とした解雇・懲戒に対し刑事罰を導入すべきとした。罰則は事業者のほか、意思決定に関与した者も対象になり得るとしている。法人に対しては、より重い量刑を科す。
解雇・懲戒以外の不利益な配転や嫌がらせなどは、現行の民事上の禁止規定に留め、罰則の対象からは外す。採用時に勤務地や職務を定めず、定期的なジョブローテーションによりさまざまな経験を積ませる日本の雇用慣行を踏まえた形だ。
労働者派遣については、公益通報を理由に派遣契約の解除や派遣労働者の交代を求めた派遣先に刑罰を科すのは適当でないとした。派遣元が派遣労働者の解雇・懲戒をした場合、派遣元や意思決定者が罰則の対象になり得るとしている。
民事裁判での立証責任の転換は、公益通報をした日から1年以内の解雇・懲戒に限定すべきとした。配転や嫌がらせなどは日本の雇用慣行などの変化を注視しつつ、引き続き検討するとしている。人事異動に不満を持つ労働者が制度を悪用し、円滑な人事運営に支障が生じるとする企業側の意見に配慮した。
現行法では、事業者に対し、公益通報者の探索防止措置の実施を法定指針により求めている。報告書は探索禁止について、法律上の禁止規定を設ける必要があるとした。具体的には、正当な理由なく労働者などに公益通報者であると明らかにすることを要求する行為など、特定を目的とした行為を禁止するとしている。
報告書を受けた消費者庁では、今通常国会に同法の改正法案を提出する準備を進めている。
(以上 労働新聞より)
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