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メンタルヘルス 中小の取組み推進へ 産保センター利用を(2024/10/2)

厚労白書が「低調」と指摘

 厚生労働省がまとめた「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業場の割合は63.8%だった。同調査は無作為に抽出した事業場1万4083事業場から有効解答を得た7842事業場について集計したものだ。

 事業場規模別にみると、500~999人で99.5%、1000人規模以上では100%と取組み率は大手ほど高いが、30~49人が71.8%、10~29人が56.6%と従業員数が少なくなるほど低い。具体的な項目をみても「メンタルヘルス対策について、衛生委員会または安全衛生委員会での調査審議」の実施率は1000人以上は82.4%となっているものの、30~49人で26.3%、10~29人で19.4%とその差は大きい。

 厚労省はこのほど「こころの健康」をテーマに厚生労働白書をまとめたが、事業場規模が小さいほど取組みが低調である傾向に留意すべきとした。また、産業保健総合支援センター、地域産業保健センターを通じて小規模事業場のメンタルヘルス対策を引き続き支援することや、商工会、商工会議所などによる会員に対する産業保健に関するサービスの提供を求めている。

 とくに全国47都道府県にある産業保健総合支援センターは、メンタルヘルス対策をはじめとする産業保健に関する相談、研修、情報提供などの支援を原則無料で行っており、利用したい。「長時間労働で社員がメンタルヘルス不調になった」、「職場復帰支援プログラムがない」、「相談体制はどうつくる?」などの悩みに対し、医師、保健師、社会保険労務士らの産業保健相談員が対応する。

 さらにメンタルヘルス対策促進員が個別に職場を訪問。対策の導入について「何からどのように取り組むか」など具体的なアドバイスを行っている。管理監督者、若年労働者向けの研修も実施する。

 地域産業保健センターは、おおむね労働基準監督署管轄区域に設置されており、労働者数50人未満の小規模事業者をサービス提供の対象としている。同センターでも、メンタルヘルスに関する相談や個別訪問による助言や指導が無料で利用できる。

 商工会議所などの取組みの一例を挙げると、大阪商工会議所では、メンタルヘルス・マネジメント検定試験という民間資格を主催している。人事労務管理スタッフ、経営幹部を対象としたマスターコース、管理監督者向けのラインケアコース、一般社員へのセルフケアコースの3つがあり、ストレス反応の種類や背景などを体系的に学習。職場で実践できる知識を身に着けるというものだ。白書では、受験を勧奨し合格者に報奨金を出している企業の事例も紹介している。

 中小企業がメンタルヘルス対策に取り組んでいない理由の1つに「取組み方が分からない」が挙げられる。こうした事業者には、「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイトこころの耳」をお勧めしたい。ホームページのなかには「中小企業の事業主の方へ~メンタルヘルスケアに役立つコンテンツ~」があり、初めてこころの問題に取り組む人でも理解しやすく解説している。たとえば、メンタルヘルスにまつわる疑問を会話形式で学ぶ「うさぎ商事の休憩室」は、ストレスや傾聴などをテーマにしており、初歩から分かる。コンテンツのほかにも、パンフレット、ツール、相談窓口が掲載され、すぐに職場に生かすことができる。

 無料で使えるツールやサービスを上手に使って、自社の対策に役立てたい。 

(以上 労働新聞より)

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