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高年齢者労災防止 環境改善を努力義務化 労政審分科会へ提案 厚労省(2024/10/25)

厚生労働省は、高年齢労働者の労働災害が増加傾向にあることから、対策を強化する方針だ。エイジフレンドリーガイドラインで求めている身体機能の低下を補う設備・装置の導入など職場環境・作業環境の改善に関する措置を企業の努力義務とする案を、10月15日に開いた労働政策審議会安全衛生分科会で示している。同ガイドラインに法律上の根拠を与えることで、取組みの適切かつ有効な実施を図るのが狙い。使用者委員からは慎重な検討を求める声が出ている。

 厚労省では、高年齢労働者の労働災害発生率の高止まりなどを背景に、エイジフレンドリーガイドラインの実施事項をはじめ、労災防止につながる取組みを定着させていくための方策を検討している。

 令和5年の労働者死傷病報告の集計によると、60歳以上の男女別の労災発生率(死傷年千人率)は男性が3.91、女性が4.16で、30歳代と比較して男性で約2倍、女性で約4倍に上るなど、年齢が高くなるほど発生率が上昇する傾向がある。さらに、人口動態の変化や高齢者の健康状態の向上を背景として、雇用者全体に占める60歳以上の割合が高まっており、休業4日以上の死傷者数に占める60歳以上の割合も、平成15年に15%程度だったものが令和5年には29.3%と大きく伸びている。

 一方で、エイジフレンドリーガイドラインに基づく取組みは浸透していない。厚労省の調査によると、高年齢労働者の労災防止対策を行っている事業場割合は2割弱。そのうち、ガイドラインの実施事項として、高年齢労働者の特性を考慮した作業管理(作業内容の見直し)を行っている割合は56.5%に上っているものの、「身体機能低下による労災発生リスクに関するリスクアセスメントの実施」(29.4%)や、「身体機能の低下を補う設備・装置の導入」(25.2%)は3割にも満たない。

 ガイドラインに基づく取組みを推進するため、15日の同分科会で厚労省は、高年齢者に対する職場環境・作業の改善を企業の努力義務とする案を示した。

 現行の労働安全衛生法では、中高年齢者に対する「心身の状況に応じた適正な配置」の措置のみを努力義務としているが、高年齢者については求める措置の範囲を広げる考え。身体機能低下を補う設備・装置の導入、特性を考慮した作業管理、勤務形態の工夫などガイドラインで求められているような対応を努力義務化するとともに、ガイドラインに法律上の根拠を与え、適切な実施を図っていくとした。

 厚労省案に対して労働者委員からは、努力義務とする措置内容を幅広く設定するよう求める声が挙がった。

 一方、ある使用者委員は、「将来的に義務化する道を開きかねない」と警戒心を示した。「仮に、ガイドラインの認知度が高まらないといった理由だけで努力義務化することになれば、法令に基づかない他の安衛法関係のガイドラインをすべて法令化するといった議論につながりかねず、適切とは思えない」と反発。「努力義務化に当たっては、安全文化が十分に根付いていない第三次産業などすべての現場が対応できるかなど、慎重な検討が必要」と訴えている。

(以上 労働新聞より)

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