解雇予告手当 支払い請求を棄却 契約終了の認識一致 東京地裁(2024/10/24)
技術者派遣を営む東京都内の人材派遣会社で働く労働者が解雇予告手当の支払いを求めた裁判の控訴審で、東京地方裁判所(中野哲美裁判長)は一審の東京簡易裁判所に引き続き、労働者の請求をすべて棄却した。合意退職に関して労働者は難色を示していたものの、雇用契約を終了させること自体は両者間で認識が一致していたと判断している。会社が明示的に解雇の通知をした事情はなく、就労を一方的に拒絶していたともいえないため、黙示の解雇の意思表示があったともいえないとした。
判決によると、労働者は令和2年4月1日に都内の人材派遣会社に入社した。派遣先は都内の学校法人で、派遣期間は4月1日~3年3月31日までだった。労働者は同年2月9日まで派遣先で働いたが、2月10日以降は勤務していない。
同社は3月17日、労働者の雇用期間を2年4月1日~3年2月24日、退職日を2月24日とする退職証明書を発行した。2月10日~24日については、年次有給休暇を取得した扱いとしている。
労働者は4月20日、新宿労働基準監督署に解雇予告手当が支払われていないと申告した。同労基署は4月30日、同社に労働基準法第20条(解雇の予告)などについて是正勧告した。同社は5月14日付で解雇ではなく合意退職だったと報告し、同労基署は5月24日に申告処理を終了する旨を労働者に告げた。労働者は解雇予告手当30万8478円と同額の付加金の支払いを求める裁判を同簡裁に対して起こした。
同簡裁は労働者の請求をすべて棄却した。両者の雇用契約は2月24日付で合意により終了しており、解雇予告手当の支払い義務はないと判断している。労働者は年休消化の申請をメールでしているほか、「こちらで数えたところ24日が退職日(最終出社)になるはずです」とのメールも送信しており、合意退職を否定する証拠もないとした。労基署による是正勧告については、同社が報告書を提出したことで申告処理は終了したと退けている。
同地裁は一審判断を維持した。同社が明示的に解雇を通知した事実はなく、労働者の就労を一方的に拒絶するなどの黙示の解雇の意思表示があったともいえないと強調。解雇した事実は認められず、解雇予告手当の請求は理由がないとした。合意退職に当たるか否かは判断を示していない。
労働者は同社に対し、合意解約を否定するメールを送信していると主張した。同地裁は合意退職に難色を示していた点は認めたが、その理由は雇用保険の関係で会社都合退職を望んでいたためであったと指摘。未消化分の年休消化を希望し、消化した場合の退職日が24日になる旨のメールを送信している点や、退職日以降、労働者が就労を求めていない点を考慮すれば、両者間で雇用契約を終了させること自体の認識は一致していたとして、認めなかった。
(以上 労働新聞より)
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